壁ドン

何年か前に「壁ドン」っていう言葉が流行ったことがある。

かっこいい男子が女子に対して行う胸キュンのやつ。

でも、自分の中では「壁ドン」っていうと、アパートで音がうるさい住人に対して、となりの部屋の人、または下の部屋の人が「うるさいぞ」と意思表示をするため、あえて壁を叩くことだと思っていた。

 

学生だった頃、アパートの2階に住んでいて、下の階には、30歳ぐらいでがっしりした体系の男の人が住んでいた。

そのアパートは結構音が響くところで、となりの部屋の人が「バタン」、「ガタン」とか物を倒したりする音がよく聞こえてきた。

うるさいなあと思っていたのだが、なぜが下の階の兄ちゃんは、私が騒音の原因だと勘違いして、下から棒でつついて来た。となりの部屋が「バタン」、「ガタン」とするたび、今度は下から「ドン」とつつかれる。

なんで自分だけこんな目にあわなきゃいけないんだろうと、ホトホト困ったものだった。

 

2、3前の職場の飲み会で、「壁ドン」の話になった。

「『壁ドン』ってしたことある~?」みたいに聞かれたので、「したことはないけど、されたことならあるな~」って答えたら、みんなきょとんとした顔になった。

うまく伝わっていないと思い、「いや~、相手は30歳ぐらいのがっしりした体育会系の男の人でした」と続けたら、「なぜ今、このタイミングでカミングアウトするんだ」みたいな空気になって、急にみんなしゃべらなくなってしまった。