人間が月に行く話

今日は今年最後の満月で、一番大きく見えるスーパームーンの夜だ。

残念だけど、新潟は厚い雲に覆われていて月を見ることはできない。

 

僕は高校生のころ天文部に所属していた。

夏休みの夜、誰もいない夜の校舎で部員のみんなと天体観測をした。

望遠鏡で月を覗きながら、アポロ11号の船長が立てた旗はどこにあるのかななんて考えていた。

 

1800年代の終わり頃、人間が月に行く小説が流行した。

その小説では、月まで届く大砲を作り、砲弾の中に人が入って発射するというものだった。

当時の多くの読者は、所詮物語の世界であり、現実に月に行くことなど不可能だと考えていた。

しかし、ある少年は本気で月に行く方法を考えていた。

「もし、人間が入るのが砲弾ではなく大砲の方で、地球に向かって砲弾を発射し続けるとする。その反動で月に行くことはできないだろうか?」

この考えは、ロケットエンジンの原理であり、これを考えた少年こそが、のちに「ロケットの父」と呼ばれるロバート・ゴダードという人だった。

まだ飛行機も発明されていない時代、本気で月に行くことを考える大人になったゴダードのことを、理解できる人は誰もいなかった。

変わり者とまわりから嘲笑されるなか、ゴダードは人と関わることがなくなっていき、人知れず孤独に研究を続けた。

ゴダードの業績が理解されたのは、彼の死後、彼の考えた方法で、本当に人間が月に行くことができるようになってからだった。

 

アポロ11号が月に着陸する69年前、17歳のゴダードが、高校の卒業式で言った言葉がある。

 

「何が不可能か」というのは難しい。

なぜなら昨日の夢は今日の希望であり、明日の現実なのだから。