「閉店のお知らせ」という貼り紙

私は朝、よくジョギングをしていて、古い商店街を通るコースを走っている。すでにシャッター通りだけど、残った数少ないお店もぽつぽつと店を畳んでいる。

そういうお店にはられた「閉店のお知らせ」を見るたび、お店の歴史を考えてしまう。

そういったお店の中でも、印象に残っているのが、「地域の皆さまに一番愛されているお店」という看板を掲げた中華料理店のドアに「閉店のお知らせ」の貼り紙を見た時だ。

「地域の皆さまに一番愛されているお店」が、なぜ、お店を畳まなければならなかったのだろうか?

「地域の皆さまに一番愛されている」というのは、店主のひとりよがりで実際には、地域の皆さまには愛されていなかったのだろうか?

 

悲しい看板というと思い出すものがある。

「パチンコ キング」と言う名前のパチンコ屋さんが、田んぼを横切る県道沿いにあった。

夏の終わりの日没直後、そのパチンコ屋の名前のネオンライトが白く光っていたのだが、地元の悪ガキのいたずらなのだろうか、最初と最後の文字が消えていた。

青々と伸びた田んぼの稲、太陽が西の彼方に沈み赤紫色の空、そこに煌々と輝くネオンライト。

季節が巡るたびに、私が思い出す晩夏の風景だ。